地底洞窟
地底洞窟
  Cave
  1980
 【地底洞窟】は1980年の夏ごろ完成。それまで活動していた『パノラマ・アワー』解散後、「宝島」誌でデビューするまでの間、ゲルニカよりなお以前に描かれたかなり初期の絵。太田の少年時の気分がとても表れ、初期の感覚を物語るに重要な、作者自身いまだに想い入れ深い作品。

 人外大魔境を作製することになった時に、この作品を使う事は最初から頭にあり、それゆえ、洞窟の唄 を入れ込んだのです。近年の作品にくらべ はるかにヴィヴィットな色使いに、その当時の、清くうららかな、私の心情を感じられます。まだまだつたない技量ながら、その時代の、持てる全て以上の力をそこに注ぎ込んでいるのがいまだに私自身をとても熱くせつない気持にしてくれる絵なのです。

 洞窟に入ってゆくというのは、当時の、様々な身の回りの事を、ドンドン離れ、迷い迷い美しい世界に人知れず到達したいという気分が表れているかもしれません。
 子供のころ沢山の防空壕があり、入ってゆくと案外長くて意外な場所に出ておどろいたりしました。私の描く、洞窟に貴方は、胎内めぐりのように入ってゆくのです。そして迷い迷いしながらやがて光を見るでしょう。そこは、貴方自身の心の中の洞窟にいつのまに通じているのですね。光を観るも良し、迷い迷いする幸せを永遠に楽しむも又良しです。 
(2002年 太田螢一)