Pilgrim of SANDLIN's SINLAND
太田螢一
 僕は現代の作家にはほとんど興味がないけれど、デーヴィッドは素晴らしい大兄として尊敬している人物だ。その様々な作品、ペインティングにもドローイングにも明確な彼の思惑が反映され、緩急自在な総合力には舌がくるくるしてしまう。

 わだかまってた九十年代のある頃、彼の作品に出くわしたのだけれど、驚きとか共感とか画力とかともかくすごく刺激を受けたのだ。境地がせせこましくなく、ダイナミックで豊かな想造力を発揮しつつ独自で濃密な恐るべきSINLAND(SANDLINのアナグラム)を観る者に展開してくれるサンドリン。彼の照魔鏡には、彼の魔法のタクトに司られてシンボリックな運命を背負った、どこかノスタルジックな文明の有象無象達の、時に甘美に時に激しく意味ありげに演じられるオペレッタが映しだされる。やるせなく色彩られたキャデラックやWベッドやネオンやモーテル‥‥ 罪と欲望の織りなす不吉な影の中に、神やデビルが跋扈する。デーヴィッド自身も又、その中の登場人物なのだ。いや絵の中の彼が血と肉を持って現実に現れて案内係をしていると考えた方が、くるりと回って彼らしいかもしれない。

 彼に会った時、スタンリー・スペンサーが好きだと言っていて、眉が開いた。僕もとても好きな作家だったから。作品の中の万物や行動にはすべからく意味があるのだということを、スペンサーの作品は僕達に教へてくれている。それは意識として無意識としてとても重要なこと(というか本来あたり前なのだが)であり、特にデーヴィッドは見えざる神の意志みたいのがチラホラしてる。そうこの世の全てはコレスポンダンスなのだということを考えねばいけないのだ。そのよーに僕にニコとほくそ笑みながら何事かを教へてくれるデーヴィッドと彼の作品に勇気を、楽しみをもらいつつも僕は、デーヴィッドにこそ屈服したいのだ。そして生きてるうちに、も一回サンドリンに会いたいのだ。

 魅惑の国の王、デーヴィッド・サンドリンが日本で以前発売したわずかな本、カード集、Tシャツが、ガリバーブックスの協力で見つかった。サンドリンが好きな人にも、今まで知らなかった人にも、これは偉大なチャンスなのだ。きっと手に入れて、僕とともに圧倒されつつわくわくと昴ぶって欲しー。
(2003年10月)

デヴィッド・サンドリン氏は太田さんよりほんの少し年長、
ニューヨークで制作に励まれ、ご活躍中です。
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